「あるぅ」
「ひんけつ♪」
「森のな」
「かんちょう♪」
「くまさん」
「にんにく♪」
「出会っ」
「たんそく♪」
「「花咲く森のみ」」
「キュオン」
「ムムー♪」
陽気な歌声が森にこだまする。
合唱を楽しむ2人と2匹に頭が痛い1人。
尊敬する上司が楽しげに浣腸♪と歌えばそれも仕方ない事だろう。
しかし、青年の頭痛の元はそれだけではなく。
「「くまさんに出会っ」」
「ムム」
「キュオーン♪」
最初は確か2人と1匹だったはずだ。
間違いなく。
いまだズキズキする後頭部を擦りながら、トーマは視線を赤いマントへ目をやった。
「あははームクムクは体当たりだけじゃなくて歌も上手いなー」
「ムム、ムムムー」
あの誇らしげに胸を張るムササビが加わるまでは確かに2人と1匹だった。
家に帰ってみると言うハルについて、ぞろぞろと3人と1匹で歩いているところへどこからか降ってきた。
べいんと。
トーマの後頭部に。
本日の落下ブツその2である。
いろいろな八つ当たりも込めて退治すべくトーマが愛刀に手をかけると、ムササビは2度目の滑空の後ハルに抱きついた。
フェザーの時と同じく笑い声を上げるハルに、どうやら彼のオトモダチだと悟る。
やり場のなくなった怒りは宙を舞いなんとも言えない複雑な表情を浮かべるトーマに、呑気な上司は「あの毛玉かわいいね」とさり気なく失礼な感想を漏らした。
そんな訳で、只今3人と2匹でハルの家へと向かっている。
おそらく目的地と思われる街の門が遠くに見えているから着くのも時間の問題だろう。
「誰が待ってるのかなー?」
あははーとどこからか拾ってきた枝をぶんぶん振りながら、どこまでも能天気な彼が羨ましい。
その横の神経の図太い上司も。
国の中枢を支えるにはこのくらいの気構えが必要なのかもしれない。
それよりも。
トーマはハルの頭上と右横を改めて観察する。
どう見てもムササビとグリフォンだ。
見間違いようもなく。
なのになんで、
「ムムームムムムムー」
「え、そうなの?」
「ムムムームム」
「そっかぁ・・・フェザーはもちろん一緒だよね?」
なんで、
「・・・キュウン」
「そんな!」
「キュッ、キュォオン」
「むー、そういうことならしょうがないかぁ」
なんで通じてるんだ。
どうやったらその『ム』と『キュオン』しかない鳴き声で意思の疎通が出来るんだ。
何がそういうことでしょうがないんだ、訳分からん。
ちなみに横を歩くジンは分かっているのかいないのか、にこにこと笑うだけである。
仕方ないと、ひとつ頭を振りトーマは前を行くハルに声をかけた。
「何かあったのか?」
「うん・・・フェザーとムクムクは街の外で待ってるって。何も知らない人から見たら自分たちはただのモンスターだからだって・・」
「そうか。ま、俺たちはついて行くから安心しろよ」
な、と安心するようにジンと目線を交わしてハルに笑いかける。
「ありがと」
帰ってきたにゃはーと気が抜けるような笑顔が微笑ましくて、2人は目を細めた。